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タンパク質デザインによる
バイオナノロボットの創成を目指す!

~Protein Design and Engineering toward the Creation of Bionanobot~

タンパク質はあらゆる生命現象に関わる生体分子であり、多彩な構造・機能を有しています。それらタンパク質の構造・機能を、化学者が「デザイナー」となって思いのままにデザインしコントロールすることが可能となれば、必要な時に必要な機能を自発的に発動する「バイオナノロボット」が医薬・バイオテクノロジー分野で活躍する時代も夢ではありません。しかし、現行のタンパク質デザインでは、複雑性・多様性に富むタンパク質を人工的に制御するための緻密かつ煩雑な技術を要するにも関わらず、タンパク質集合体の構造を構築するに留まっています。そこで当研究室では、タンパク質の特徴を無理矢理制御するのではなく、個々のタンパク質が本来備えている長所を最大限利用する「新しいタンパク質デザイン」の確立を目標とし、将来的にバイオナノロボットの創成に繋がるような研究を推進しています。

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タンパク質をデザインする

「進化の力」を利用し望んだ酵素を作り出す!2018年のノーベル化学賞はタンパク質の進化分子工学にスポットが当たりました。中でも受賞者の一人であるFrances H. Arnold教授(Prize Share: 1/2)の研究は、「ダーウィン進化」を模倣して変異と選択のステップを無数に繰り返すことで、自然界で今後発生し得るタンパク質の出現を意図的に加速させる、というタンパク質の「指向性進化」を実現した画期的な研究です。指向性進化はタンパク質デザインにおける有力な手法の一つですが、他にも「計算科学に基づくデザイン」や「直感的デザイン」があり、それぞれ目まぐるしい発展を遂げています。当研究室ではこれらのうち「直感的デザイン」によるタンパク質デザインに取り組んでいます。

タンパク質の高次構造体形成デザイン
(参考論文:Nature 2016, 533, 369-373

近年、前述のようなバイオナノロボットの創成を目指したタンパク質デザインの研究が活発になってきています。しかし、これまでのデザインの大半は、極めて複雑かつ多様なタンパク質の構造を人工的に制御するための高度な技術を要するものでした。そのため成功確率が低く、多くの試行錯誤を伴っているのが現状です。一方で鈴木が以前に行った研究では、「個々のタンパク質の特徴を無理矢理制御するのではなく逆に利用する」という独自のアイデアに基づき、これまで困難とされてきた「欠陥のない均一なタンパク質2次元シート構造の作製」を実現しました。このとき行ったデザインは、正方形のタンパク質の四隅にアミノ酸の一種であるCysteineを「コネクター」として取り付け、それら同士を連結(酸化によるジスルフィド結合形成)させるというとてもシンプルなものです。さらに、コネクターをアミノ酸の一種であり金属を介した結合を可能とするHistidineへと変更したり、ベースのタンパク質を4量体から8量体へと改変したりすることで、構造の異なる2次元シートの作製をも実現し、本デザインの潜在的な発展・応用の可能性を見出しました。

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「構造変化能の人工制御」+「機能性の付与」
=新しい独自のデザインへの展開

(参考論文:Nature 2016, 533, 369-373, Nature Chemistry 2018, 10, 732-739, Biochemistry 2021, 60, 1050-1062

上述のデザインで得られた2次元シート構造を詳細に調べたところ、様々な構造状態を取ることが明らかになりました。これはCysteine同士の結合の柔軟性を反映した、2次元シート構造の「開閉状態変化」によるものであり、このフレキシブルな状態変化は「攪拌(開)⇄沈殿(閉)」の機械的操作により制御可能であることも分かりました。さらに注目すべきは、この開閉可能な構造が下図に示すように「Auxetic」と呼ばれる性質を示すことであり、外部からの衝撃を効果的に吸収するナノマテリアルとしての応用が期待できます(実際、Auxeticの性質を活かしたマテリアルが2016年に発表されたNikeのシューズのソール部分に採用されています)。また、ベースとなるタンパク質にさらなるデザインを加えることで、開閉状態の駆動制御にバリエーションをもたせたり、2次元シートへ機能を付与することにも成功しています。

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「構造」と「機能」の融合デザインへ !

現在のタンパク質デザインの多くは、「構造」と「機能」のどちらか一方に焦点を絞ったものに留まっています。上述のデザインも元々は「構造の作製」を目指したものであり、サンプルを詳細に解析して初めて「機能の発見」に成功し、その後のデザインに繋げました。一方、自然界では多くのタンパク質が「構造の構築」と「機能の発現」双方の役割を担っています。両者を化学者が自由にコントロールできるようになれば、タンパク質デザインは飛躍的に発展すると予想されます。そこで当研究室では、「タンパク質の特徴を無理矢理制御するのではなく、逆に利用してタンパク質本来の魅力を引き出すデザイン」をモットーに、これを進化・発展させることで、構造と機能の双方を包括した「新しいタンパク質デザイン」の確立を目指します。さらに、得られる知見に基づき、将来多くの分野で活躍することが期待される「バイオナノロボット」の創成を目指した研究を推進していきます。これらの実現に向け、現在以下のプロジェクトを展開中です。

現在進行中のプロジェクト

  •  複数のタンパク質によるシンプルな高次構造体形成手法の確立

  • ​ 秩序だったタンパク質集合体の形成手法の確立

  •  天然タンパク質が有する機能を取り入れた機能性タンパク質集合体の創成

  •  「構造形成デザイン」×「人工酵素デザイン」×「分子進化法」

=次世代タンパク質デザインの創成(学術変革B)

   → 詳細は学術変革領域研究(B)『SPEED』のHPをご覧ください

  •  他の生体高分子との融合デザインの創出(京都大学 齊藤博英教授との共同研究)

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